肥満=現代文明が生み出したもの

人類の200万年の歴史は飢餓との戦いでした。いつ何時、飢えが襲ってきて餓死するかもしれない状況が常にあった人類にとって、食べ物が食べられるときにはたくさん食べること、余剰なエネルギーをできるだけ脂肪として蓄えておこうとするメカニズムこそが生きながらえるための条件でした。

現代のように食べ物が飽和し、交通手段が発達し、あらゆる物がオートマチック化して、体を動かさない生活が当たり前になり、初めて人類は「肥満」という文明病に悩みだしたといえます。少し前までは誰しもが、何とかして脂肪を蓄えようとしていました。当然、「積極的にやせよう」などというプログラムは、本来人類という生物には備わっていないものです。

脳は体の危機状態を無意識のうちに察知し、生体の防御機構を働かせることでそれぞれの個体の生を存続させてきました。いつ何時、飢餓にさらされるかわからない状況を何とかして生き延びようとしてきた我々人類にとって、心身ともに健康な状態にあってこそ、ようやく痩せることを考えられる段階になります。少しでも体調不良(精神面でも肉体面でも)があれば、体に脂肪を蓄えておこうと脳が命令を出す。歳をとって、やせにくくなるのは、加齢によって心身の状態が最高時のレベルより劣ってきているのを脳が感知し、なるべく個体を守ろうとして蓄える方向に働くことが原因と考えられるでしょう。

人の身体は脂肪を蓄えやすい

繰り返しますが、人間の身体はやせようとする現象に抵抗するようできています。特に病気ではないものの、身体の内部環境(自律神経系)が悪いとそれはストレスとなり、抗ストレスホルモン(副腎皮質ホルモン)を分泌させます。このホルモンは脂肪分解を抑制し、脂肪を付ける方に働くものです。人類の歴史上最大のストレスは飢餓であり、飢餓状態を生き延びるためにこれらのホルモンが頑張って血糖値を上げ、脂肪を蓄える方へ生体をコントロールしてきたのです。さらに、女性ホルモンの分泌バランスというのは自律神経系によって大きく左右されるもので、皮下脂肪やセルライトの増加に影響します

やせにくくなった、何をやってもやせない、という悩みがあれば、このダイエット抵抗性の存在を考えることがポイント。心身共に健康状態であるときにしか、ダイエットの本当の成功は望めません。

自分のタイプを知ってダイエットに取り組まないと効果的にやせられないだけでなく、体の調子すら悪くさせてしまいます。なぜなら、自律神経をはじめとしたやせるメカニズムがより複雑だという背景があるからです。

しっかり自分と向き合い自分を知る、ということが、ダイエットの成功にも、アンチエイジングにも、健康に長く生きるためにも必要不可欠だということです。

 

著者
青木晃(医師)

◼プロフィール

防衛医大、東大医学部付属病院などで、内分泌・代謝内科、腫瘍内科の臨床研究に従事。
多くの生活習慣病患者、がん患者の診療を通し、従来の日本の保険医療の限界を痛感。日本の生活習慣病、がん疾患の撲滅のための診療を実践。「老化が病気を引き起こす」という観点からアンチエイジング(抗加齢)医学のフィールドにおいて早くから活躍。
2007年10月、順天堂大学大学院に開設されたアンチエイジング医学の講座「加齢制御医学講座」の准教授に就任し、抗加齢医学の臨床・研究・教育にも従事。
TV、ラジオの健康情報番組への出演、多数の雑誌内特集記事の監修、書籍の執筆や講演活動などを幅広く行い、生活習慣病予防、抗加齢医学の啓発に従事。日本抗加齢医学会役員としても、日本全国のアンチエイジングクリニック、アンチエイジング関連施設での指導・アドバイス、講演会等を行っている。
自らもアンチエイジングライフを日々の生活の中で実践し、ホルモン年齢、脳年齢、筋・骨年齢などはすべて30代前半の体内年齢をキープしている。

◼所属学会

・日本健康医療学会常任理事
・日本エイジマネージメント医療研究機構理事
・日本抗加齢医学会評議員
・日本内科学会認定内科医
・日本抗加齢医学会専門医
・日本健康医療学会認定医

◼主な著書・共著

『モナリザエクササイズ』(エクスナレッジ)
『40歳からのタイプ別 ダイエット診断』(竹書房)
『いい睡眠があなたを10歳若くする』(青春出版社)
『一生若くいられる「都市型原人」という生き方』(マキノ出版)
など、多数。