医師になり、体験した出来事

私、青木晃は1988年3月に防衛医科大学校を卒業し、同年5月医師国家試験に合格し医師となりました。母親を医大3年生の時にがんで亡くしていた事もあり、卒後はがんを診る科に進もうと当時日本では初となる腫瘍内科がある第三内科の医局に入りました。第三内科は腫瘍内科の他に、代謝・内分泌内科、呼吸器内科、血液内科、神経内科のセクションがあり、研修医時代は全ての患者さんの担当になります。

医者になって初めて患者さんの死を看取る日がきました。その患者さんは、がん患者さんではなく、糖尿病の末期の50代後半の男性の患者さんでした。私が受け持った時には、糖尿病の三大合併症に侵され網膜症で目は見えず、腎症で人工透析になっていて、神経障害で足の指や陰部にひどい潰瘍がある状態でした。さらに糖尿病による動脈硬化が進んでいて脳梗塞を起こし麻痺と言語障害もあります。「なんでこんなに悪くなるまで放っておいたんだろう?糖尿病は予防ができる病気なのになぜ?」といたたまれない気持ちでいっぱいになりました。臨終には、奥さんは毎日の看護疲れでご自身が体調を崩されてしまい、北海道に住んでいた息子さんも間に合えず、たったお一人で寂しい旅立ちをされたのです。

決意、そして

糖尿病の末期の悲惨な有様を医者として痛感し、この日本から糖尿病患者を無くしたいという強い思いを持ちました。

保険診療の現場で10年ほど糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満症、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病の臨床医をしてきて、日本の保健医療制度の限界に気づきました。日本は国民皆保険制度という素晴らしい制度を持つ先進国です。しかし、生活習慣病はある日突然に発症するわけではありません。尿に糖が出始めたり、血圧が少しずつ高くなって来たり、所謂予備群の時期が必ずあります。ところが、その時期には保険医療は受けられないのです。完全に糖尿病、高血圧症、脂質異常症という病気の診断が付いて、初めて保険での治療が開始されます。予防できる時に保険医療の現場の医師はほとんど介入できません。「ここに居たんでは、糖尿病患者を減らすことはできない!」そう思い、2000年に防衛庁(当時)医官を退職し、自由診療の領域でお題目ではない実践的予防医療をやろうと決めました。

生活習慣病の敵、それは生活習慣

生活習慣病は、モチベーションの維持と良好な生活習慣の継続が大切なのですが、それがまた一番難しいところでもあります。糖尿病や肥満症などの患者さんは、入院させればほぼ100%データや症状の改善が見られます。外来通院患者さんでは通院頻度が多いほど血糖コントロールや体重コントロールが良好です。また、血糖値を自己血糖測定器で頻繁にチェックしている人、毎朝・毎晩体重測定をする人は血糖コントロール、体重コントロールがうまくいくというエビデンスがあります。そう、ポイントはモチベーション、日々の密接な関わり(コーチング)、レコーディングにあるのです。

繋がり方が重要

私は8年前からSNSを使った生活習慣改善プログラムができないものかと研究を始めました。ブログはその情報発信が一方通行で受け手(ブログの読み手)とのタイムラグが大きい。ツイッターはリアルタイムではあるが情報が流れていってしまい文字数制限がある。その点Facebookはリアルタイムでつながっていて情報量も多く、タイムラインで時間の行き来も比較的しやすいので、生活習慣のウォッチングやそれに対してのコーチングがリアルでできることに気付きました。食べたもの、生活活動量、睡眠時間、体重、血液・尿検査のデータを瞬時に見ることができます。今までは週1〜2回、月1回の外来でしかチェックすることができなかった患者さんの日常生活をFacebookでつながっていさえすれば、すぐに見ることができ、指導することが可能です。目標を明確にしてそれに向かって努力する。結果が良ければ褒めてもらえ、そうでなければ指導してもらえる。誰かに見てもらっているとモチベーションも下がりません。

はじめは自分のFacebookの友人らに対し、ダイエットの指導を行ってみました。毎食の食事内容、毎朝の体重計の測定値、尿検査のテストテープなどを写真に撮って送ってもらったり、歩数計付きのウエアラブル端末をつけてもらい毎日の歩数をスマホ上のアプリで競い合うなど色々なことがスマホではでき、それをFacebookのグループページで管理すれば、SNSでの生活習慣指導が可能かつ非常に効率よくできることがわかりました。月一外来指導がリアルタイム外来に変わった瞬間でもありました。

糖尿病患者を減らしたい、リアルタイム外来を実現したもの

これを専用のアプリケーションに発展させたものがMeditesです。これまで医療というものは、医療機関に行って患者と医師が1体1の対面で行われるというのが当たり前であったのを打ち破る画期的なシステムなのです。健康長寿のための予防医療であるアンチエイジング(抗加齢)医療では、「生活習慣における行動変容が実践継続される」ことをその最終目標としています。Meditesはそれを可能にする唯一無二のプログラムでもあります。

 

著者
青木晃(医師)

 

◼プロフィール

防衛医大、東大医学部付属病院などで、内分泌・代謝内科、腫瘍内科の臨床研究に従事。
多くの生活習慣病患者、がん患者の診療を通し、従来の日本の保険医療の限界を痛感。日本の生活習慣病、がん疾患の撲滅のための診療を実践。「老化が病気を引き起こす」という観点からアンチエイジング(抗加齢)医学のフィールドにおいて早くから活躍。
2007年10月、順天堂大学大学院に開設されたアンチエイジング医学の講座「加齢制御医学講座」の准教授に就任し、抗加齢医学の臨床・研究・教育にも従事。
TV、ラジオの健康情報番組への出演、多数の雑誌内特集記事の監修、書籍の執筆や講演活動などを幅広く行い、生活習慣病予防、抗加齢医学の啓発に従事。日本抗加齢医学会役員としても、日本全国のアンチエイジングクリニック、アンチエイジング関連施設での指導・アドバイス、講演会等を行っている。
自らもアンチエイジングライフを日々の生活の中で実践し、ホルモン年齢、脳年齢、筋・骨年齢などはすべて30代前半の体内年齢をキープしている。

◼所属学会

・日本健康医療学会常任理事
・日本エイジマネージメント医療研究機構理事
・日本抗加齢医学会評議員
・日本内科学会認定内科医
・日本抗加齢医学会専門医
・日本健康医療学会認定医

◼主な著書・共著

『モナリザエクササイズ』(エクスナレッジ)
『40歳からのタイプ別 ダイエット診断』(竹書房)
『いい睡眠があなたを10歳若くする』(青春出版社)
『一生若くいられる「都市型原人」という生き方』(マキノ出版)
など、多数。